もう一度、その光景を想像する。
自然と私も、そのときの金澤さんに、乾杯していた。
「旅行が決まり、準備期間の辛いときなどは、この一人で飲むであろうブランデーの味を想像しては元気づけたものです。
当然のことながらこの光景は何百回となく頭の中で描いてきた訳ですが、実際は騒々しい機内とこれから先の旅の不安や別れてきた家族の事などで気持ちが落ち着かず、あれほど期待していたにもかかわらずさしたる感激がなかったのは少し残念です。
しかし不思議なもので今でもこのブランデーの味ははっきりと覚えています。」
ふと横を見ると、吉見さんがブランデーを持ってきていた。
「もう一度、乾杯しましょう! 」
続く